塩麹は、いまやスーパーの調味料コーナーでも当たり前に見かけるようになりました。「なんとなく体に良さそうだから」と買ってみたものの、実際にどう使いこなせばいいのかよくわからない、という声も受講生のみなさんから伺います。
冷蔵庫の奥に入れたまま、たまに肉料理に使う程度で終わってしまい、「せっかく買ったけれど、どんな魅力があって何に使うのが一番いいんだろう?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、塩麹がどうやって生まれる調味料なのか、発酵の力で食材にどのような変化が起きるのか、そして日々の料理にどう活かせるのかを、できるだけわかりやすくまとめました。塩麹の作り方や保存のコツ、よくある疑問についても触れていますので、「買ったけどうまく使いこなせていない」という方にも、これから日々の食卓に取り入れてみたい方にも、参考にしていただけたら嬉しいです。
毎月ライブ講座を開催しているほか、疑問や質問を講師に聞ける掲示板もあります!
塩麹とはどんな調味料?

塩麹は、米麹と塩、水を合わせて発酵させてつくる調味料です。麹菌が米に含まれるでんぷんやたんぱく質をゆっくりと分解していく過程で、うま味のもとになる成分や、ほんのりとした自然な甘みが生まれます。塩だけでは出せない、まろやかで奥行きのある味わいになるのが特徴です。
麹自体は、日本の食文化の中で古くから使われてきたもので、味噌や醤油、日本酒、みりんなど、身近な発酵食品づくりにも欠かせない存在です。塩麹は、その麹の働きをそのまま調味料として料理に活かせる、いわば「発酵の入り口」のような存在ともいえます。
塩麹に期待できる「おいしい」効果

塩麹には、麹菌がつくり出す酵素がたくさん含まれています。ここでは、発酵の仕組みから期待できる、料理をおいしくする働きをいくつかご紹介します。
なお、これらは食品としての一般的な特徴であり、特定の症状に対する効果を保証するものではありません。とはいえ、日々の食卓を少し豊かにしてくれる調味料であることは確かです。
素材のうま味と甘みを引き出す
麹菌が持つアミラーゼという酵素は、でんぷんをぶどう糖に分解する働きを持っています。これによって塩麹には自然な甘みが生まれ、料理に加えるとやさしい甘さとコクを添えることができます。また、たんぱく質を分解するプロテアーゼという酵素も含まれているため、素材のたんぱく質を分解し、うま味成分であるアミノ酸が増えるといわれています。いつもの料理が、少し深みのある味わいになるのはこのためです。
お肉やお魚をやわらかくする
プロテアーゼの働きによって、お肉やお魚のたんぱく質の構造がゆるやかに変化し、繊維がほぐれてやわらかい食感になりやすいとされています。塩麹に漬け込んでから調理すると、パサつきがちな食材もしっとりとした仕上がりになりやすいのはこのためです。から揚げや照り焼き、ステーキなど、いつものおかずに一手間加えるだけで印象が変わるので、試してみる価値があります。

塩分をおだやかに感じさせる
塩麹には塩分が含まれていますが、麹由来のうま味や甘みが加わることで、同じ塩分量でもまろやかな味わいに感じられやすいという声もあります。味に深みが出ることで、調味料全体の使用量を見直すきっかけになる方もいるようです。
日々の食事に発酵食品を取り入れられる
塩麹は麹菌による発酵(正確には糖化)を経てつくられる食品であり、味噌や醤油、ぬか漬けなどと同じく、日本の発酵文化に根づいた存在です。発酵食品は微生物の働きによって風味や成分が変化していく過程が特徴的で、微生物の生体維持活動(代謝)によってその深い味わいが作り出されています。
発酵食品全般について健康面での効果を断定的に述べることは難しく、食生活は多様な要素で成り立っています。塩麹だけを特別に取り上げて過度な期待を持つのではなく、日々の食事のバリエーションを広げる調味料の一つとして楽しんでいただくのがよいかと思います。
発酵食大学では、発酵調味料を活用して野菜をたくさん美味しく食べたり、バランスの良い食生活をお勧めしており、発酵食品と食物繊維を合わせて取り入れることで腸内環境を徐々に整えていく「菌トレ!」を合言葉にしています!
野菜の塩もみに使うとうま味が増す
きゅうりやキャベツなどの塩もみに、塩の代わりに塩麹を使うのもおすすめです。いつもの塩もみと同じように塩麹をもみ込んで少し置き、出てきた水分を絞るだけで、塩だけのときよりも甘みやコクが野菜に染み込みやすくなります。水分もしっかり抜けるので、作り置きの副菜としても使いやすいです。

実験|「塩麹」と「塩+酒」でやわらかさを比べてみました
鶏むね肉は、塩でつけるより塩麹をまぶしたほうがやわらかいというのは、感覚としてずっと感じていたのですが、同じ条件でちゃんと比べたことはありませんでした。というわけで、実際に作り比べてみることにしました。
用意したのは鶏むね肉2枚。むね肉の重量(グラム数)を揃えて、フォークで数カ所穴を開けてから、片方には塩麹、もう片方には塩と酒をもみ込みます。

塩分量もどちらも肉の重さの1%くらいに揃えて、条件はできるだけ同じにしました。一晩冷蔵庫で寝かせたら、アルミホイルに包んで同時にグリルで蒸し焼きに。
※左が塩麹をまぶして焼いたもの、右が塩+酒をまぶして焼いたもの
焼き上がりを見た感じは、塩麹のほうが麹の糖分で少し焦げ目がついているくらいで、正直そこまで大きな差がないように見えました。でも、切ってみたら全然違いました。包丁を入れたときの感触からして、塩麹のほうが明らかにやわらかいです。
まずこちらの皿の手前が塩と酒をまぶして加熱したほうです。表面がちょっとパサついているのがわかります。
※手前が塩+酒をまぶして焼いた鶏むね肉
そしてこちらの皿の手前が塩麹をまぶしたほうです。同じように火を通したとは思えないくらい、見た目からしてしっとりしているのがわかります。食べ比べてみても、塩と酒はパサつく食感なのに対して、塩麹はしっとりやわらかくて、麹の甘みもふわっと感じられておいしかったです。
※塩麹をまぶして焼いた鶏むね肉
同じ鶏むね肉の重さ、同じ塩分量、同じ焼き方でこれだけ違いが出るのはちょっと驚きでした。「塩麹だとやわらかくなる気がする」というのは、思い込みではなくちゃんと差があるんだな、と実感できた実験でした。
塩麹の効果がひと目でわかる一覧表
ここまでご紹介した内容を、表にひと目でわかるようにまとめました。何に効果があるのか、どんな使い方に活かせるのかをざっくり確認したいときの参考にしてください。
| 効果 | 働きのもと | 活かしやすい使い方 |
|---|---|---|
| うま味・甘みが増す | アミラーゼ・プロテアーゼ | 下味、炒め物、ドレッシング |
| 肉や魚がやわらかくなりやすい | プロテアーゼ | から揚げ、照り焼き、鶏ハムなどの漬け込み |
| 塩分をまろやかに感じやすい | 麹由来のうま味・甘み | 炒め物、スープの味付け |
| 発酵食品を日々の食事に取り入れられる | 麹菌による発酵 | 味噌・醤油のように日常使い |
| 野菜の塩もみがおいしくなる | 塩麹の浸透・酵素の働き | きゅうり、キャベツなどの塩もみ |
塩麹の基本の使い方とおすすめアイデア

塩麹は、和食だけでなく洋食や中華にも使える調味料です。代表的な使い方を、目安の分量やちょっとしたコツも交えてご紹介します。塩気の強さは商品やご家庭での仕込み方によって差があるため、最初は少量から加えて、味を見ながら調整していくと使いやすいです。
下味・漬け込み
鶏肉や豚肉、魚の切り身に塗って30分〜一晩ほどおいてから焼いたり蒸したりする使い方です。目安は食材の重さの8〜10%ほど。ポリ袋に食材と塩麹を入れてもみ込み、空気を抜いて冷蔵庫で寝かせると、少ない量でも全体に味が回りやすくなります。厚みのある肉は一晩、薄切り肉や魚は30分ほどでも十分に味がなじみます。塩麹には糖分が含まれているため、そのまま焼くと焦げやすくなります。焦げ付きが心配な場合は、焼くときに表面についた塩麹をキッチンペーパーなどで軽く拭き取ってから焼くのがおすすめです。火加減を少し弱めにするのも、焦げ付きを防ぐコツのひとつです。
炒め物・スープの味付け
野菜炒めや卵炒めの味付けはもちろん、コンソメや鶏ガラスープの代わりに使うと、いつもの一品がやさしい味わいに変わります。肉じゃがやポトフ、カレーのような煮込み料理では、具材と一緒に加えて煮込むと、時間をかけてじっくり味がなじみ、コクのある仕上がりになります。味噌のように香りを重視する調味料ではないので、加えるタイミングをそれほど気にする必要はなく、炒め物でも煮込みでも、料理に合わせて使いやすいタイミングで加えて問題ありません。
ドレッシングやたれ
塩麹1:オリーブオイル2:酢(またはレモン汁)1くらいの割合で混ぜるだけで、シンプルながら奥行きのあるドレッシングになります。すりおろしにんにくや黒こしょうを加えれば、蒸し鶏やカルパッチョのソースとしても使えます。冷蔵庫で数日ほど保存できるので、多めに作っておくと便利です。
野菜のもみ込み
きゅうりやキャベツ、白菜、大根、かぶなどに、野菜の重さの10〜15%ほどの塩麹をもみ込み、15〜30分ほど置いて浅漬け感覚で楽しむ使い方です。出てきた水分はしっかり絞ると、味がぼやけずおいしく仕上がります。冷蔵庫で2〜3日ほど日持ちするので、常備菜としても重宝します。
塩麹をよく使うシーン

私自身、日々の料理でいちばん塩麹を使う機会が多いのは鶏むね肉の下味です。塩麹を切らしているときは塩とお酒で下味をつけることもありますが、焼いたり蒸したりしたときのパサつき具合やしっとり感、食感がまったく違います。ほんのりとした甘みも加わって、やっぱり塩麹に漬けたお肉は美味しいな、と実感します。
ヘルシーで安価、たんぱく質もとれるむね肉ですが、どうしてもパサつきやすいのが調理の悩みどころでした。今では「むね肉には塩麹」というくらい、欠かせない存在になっています。
特に気に入っているのは、一口大に切った鶏むね肉に重さの10%ほどの塩麹をもみ込んで30分ほど置き、米粉や片栗粉を薄くまぶして油で両面揚げ焼きにする方法です。むね肉とは思えないジューシーさと香ばしさが出て、材料もシンプル、家族も大好きなのでよく作っています。
塩麹を日常的に使うようになってから感じている変化としては、シンプルな味付けでも満足できるようになったことがあります。塩麹などの発酵調味料を使うようになったことをきっかけに普段の味付けを見直すようになりました。素材そのものの味を意識するようになり、シンプルな味付けでもおいしいと感じられるようになりました。
塩麹のうま味やコクのおかげで、あれこれ調味料を足さなくても味が決まると感じることも増えました。以前は使い切れない調味料が冷蔵庫にたまってしまい、賞味期限内に使いきれず処分することもあったのですが、今ではそうした調味料が自然と減っています。◯◯の素のような市販の合わせ調味料に頼らなくても、おいしいと感じられるようになったのも、自分の中では大きな変化です。素材本来の味わいを感じられる料理や食べ物を好むようにもなりました。
定番レシピ|塩麹の鶏ハム

塩麹の定番レシピといえば、鶏ハムも欠かせません。しっとりとやわらかい仕上がりになるので、作り置きやお弁当のおかずにもおすすめです。
材料(2〜3人分)
- 鶏むね肉 1枚(300g)
- 塩麹 大さじ1と1/2(30g)
- 酒 大さじ1
作り方
- 鶏むね肉は観音開きにして厚みを均一にし、フォークで全体に穴を開けます。
- 塩麹と酒をもみ込み、常温で30分ほど置きます。
- ラップの上に鶏肉をのせて巻き、両端をねじって結んだら、アルミホイルで包みます。
- 鍋に2リットルの熱湯を沸かして鶏肉を入れ、再び沸騰したら火を止めます。フタをして60分ほど置き、粗熱が取れたら切り分けます。
余熱でじっくり火を通すことで、むね肉でもしっとりとした食感になります。切り分けてサラダに乗せたり、そのままおつまみにしたりと、活躍の幅が広いのも魅力です。
自家製塩麹の作り方

市販の塩麹も便利ですが、実は思っているよりも簡単に手作りできる調味料です。発酵の様子を見ながら自分のペースでつくれるのも手作りの楽しさなので、ぜひ一度試していただきたいと思います。ここでは基本の材料と手順をご紹介します。
材料(作りやすい分量)
- 米麹 200g
- 塩 60g(生麹の場合)、70g(乾燥麹の場合)
- 水 200ml(生麹の場合)、260ml(乾燥麹の場合)
作り方
- 米麹をボウルに入れ、固まっている場合はよくほぐしながら塩を混ぜ合わせます。
- 塩がなじんだら水を加え、全体がひたひたになるくらいまで混ぜます。
- 清潔な容器に移し、蓋を軽くしめて直射日光の当たらない常温に置きます。
- 1日1回、清潔なスプーンなどで底からかき混ぜます。
- 7〜10日ほどで麹の粒がふっくらとやわらかくなり、とろみと甘い香りが出てきたら完成の目安です。
発酵の進み具合は気温によって変わるため、夏場は数日、冬場は1週間以上かかることもあります。味見をしながら、辛みが落ち着いて甘みが感じられるようになったタイミングを見つけてみてください。
塩麹の保存方法と注意点

完成した塩麹、または開封後の市販の塩麹は、冷蔵庫での保存が基本です。密閉容器に入れておけば数ヶ月ほど持ちますが、時間が経つにつれて発酵がゆっくり進み、風味が変化していきます。冷凍保存も可能で、小分けにしておくと使いたい分だけ取り出せて便利です。
塩分が含まれているとはいえ保存食品として万能というわけではないので、取り出す際は清潔なスプーンを使う、匂いや見た目に変化がないか確認するなど、一般的な発酵調味料と同様の取り扱いを心がけてください。
よくある質問(Q&A)
塩麹と塩の違いは何ですか?
塩は塩化ナトリウムのみですが、塩麹には麹菌による発酵で生まれた酵素やうま味成分、糖分が含まれています。そのため塩気だけでなく、コクや甘みも一緒に加えられるのが違いです。
毎日使っても大丈夫ですか?
塩麹自体は日常的に使われている調味料ですが、塩分を含むため、他の調味料との合計量を考えながら使うことをおすすめします。食生活全体のバランスを見ながら取り入れていただくのが良いかと思います。
手作りと市販品はどちらがいいですか?
どちらにもそれぞれの良さがあります。手作りは麹の粒感や発酵の進み具合を自分で調整できる楽しさがあり、市販品は品質が安定していて手軽に使えるのが利点です。ライフスタイルに合わせて選んでみてください。
一回に使う量はどのくらいが目安ですか?
商品によって塩分濃度が異なるため一概には言えませんが、肉や魚100gに対して塩麹大さじ1/2程度(10g程度)を目安にすると、まずは失敗しにくいです。味を見ながら少しずつ調整してみてください。
ダイエット中でも塩麹を使えますか?
塩麹そのものに特別な減量効果があるわけではありませんが、うま味や甘みが加わることで、塩分や油分を控えめにしても食事の満足感を得やすくなる場合があります。食事全体の量やバランスを見ながら取り入れていただくのがよいかと思います。
色や香りが変わってきたのですが、食べても大丈夫ですか?
発酵が進むにつれて色がやや濃くなったり、香りが強くなったりすることは自然な変化です。ただし、はっきりとした異臭がする、カビが見られる、糸を引くなど普段と違う様子がある場合は使用を控えてください。少しでも気になるときは、無理に使わないほうが安心です。
子どもや高齢の家族も食べられますか?
塩麹は塩分を含む一般的な調味料のため、通常の食事の範囲であれば特別な制限はありません。ただし塩分摂取に配慮が必要な方がいるご家庭では、使用量を控えめにするなど様子を見ながら取り入れてください。気になる場合はかかりつけの医師などにご相談ください。
塩麹を使う上で、料理での注意点はありますか?
塩麹に含まれるアミラーゼという酵素は、でんぷんを分解する働きを持っています。そのため、加熱済みのじゃがいもや炊いたご飯のような、でんぷん質の多い食材に混ぜてそのまま長時間置いておくと、水分が出てべちゃっとした食感になりやすいので注意が必要です。これを防ぐには、食べる直前に和えるのではなく、加熱前(調理中)に塩麹を加えてしっかりと火を通すのがおすすめです。熱を加えることで酵素の働きが止まるため、でんぷんが分解されて食材がドロドロになってしまうことはありません。かぼちゃやさつまいも、里芋なども同じ理由で、下味に漬けたまま生の状態で長時間置くと崩れやすくなることがあります。漬け込み時間を短めにするか、早めに加熱して火を通すなど、食材の特性に合わせて使い方を調整してみてください。
塩麹の効果についてのまとめ

塩麹は、麹菌の発酵によって生まれるうま味と甘みを楽しめる調味料です。お肉やお魚をやわらかくしたり、味に深みを加えたり、野菜の塩もみをおいしくしたりと、使い方の幅も広く、和食はもちろん洋食や中華にも取り入れやすいのが魅力です。
「なんとなく体に良さそう」というイメージだけで使ってしまっていた方も、今回ご紹介した使い方や一覧表を参考にしていただければ、塩麹をもう少し身近な調味料として活用しやすくなるはずです。手作りにも挑戦しやすいので、まずは少量から試してみて、ご自身の料理に合う使い方を見つけていただければと思います。
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このレシピの作成者(考案・監修)

発酵食大学レシピ開発チーム
(発酵食エキスパート在籍)
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2013年から発酵食品のレシピ制作に関わっている発酵食大学の講師やスタッフが、「簡単で美味しくて、ヘルシー」をモットーに制作しています。
スーパーで気軽に手に入る食材を使い、忙しくても誰でも手軽に作ることができるレシピを心がけているので、日々のご飯づくりに参考にしていただけたら嬉しいです。
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