仕事や家事で忙しい日々が続くと、毎日の献立を考えるのも一苦労ですよね。家族にはできるだけ栄養があって美味しいごはんを作ってあげたいと思いつつも、品数を増やしたり手の込んだ調理をしたりする余裕がない日も多いのではないでしょうか。
そんなときに頼りになるのが、少ない工程でも味を整えてくれる発酵調味料です。塩麹や醤油麹などが広く知られていますが、私が以前からずっと愛用しており、ぜひ皆さんにもおすすめしたいのが、石川県能登地方の伝統的な魚醤「いしる」です。

いしるは、和食はもちろん、洋食やエスニック料理まで幅広く使える万能な調味料です。この記事では、いしるの基本的な特徴から、出汁を使わずにうま味を出すコツ、毎日の料理にすぐ活かせるレシピまで詳しく解説します。
石川県能登地方の伝統調味料「いしる」とは?
「いしる」という名前を耳にしたことはあっても、具体的にどんな調味料なのかよく知らないという方も多いかもしれません。まずは、いしるの由来や特徴について整理しておきましょう。

魚と塩だけで作られる伝統的な魚醤
いしる(地域によっては「いしり」とも呼ばれます)は、石川県の能登地方で古くから作られてきた魚醤です。
一般的な醤油が大豆と小麦を原料としているのに対し、いしるは魚介類を主原料としています。主にイワシの身やイカの内臓に塩を加え、長期間じっくりと発酵・熟成させて作られます。
魚のタンパク質が発酵の過程で分解されてアミノ酸に変わるため、独特の芳醇な香りと深みのあるうま味が生まれるのが特徴です。
日本三大魚醤のひとつ
世界にはタイのナンプラーやベトナムのニョクマムなど様々な魚醤がありますが、日本にも地域ごとに独自の魚醤文化が存在します。
いしるは、秋田県の「しょっつる」(ハタハタが原料)、香川県の「イカナゴ醤油」(イカナゴが原料)と並び、「日本三大魚醤」のひとつに挙げられています。
日本の風土と食文化の中で育まれてきた調味料だからこそ、海外の魚醤に比べて和食や家庭料理に馴染みやすい味わいを持っています。
なぜ「いしる」を使うと料理が簡単になるのか?
いしるを台所にひとつ置いておくと、普段の料理の手間がぐっと減ります。その理由をいくつかご紹介します。

出汁をとる手間が省ける
いしるの最大のメリットは、市販の和風だしの素やコンソメ、中華スープの素などを入れなくても、これひとつでしっかりとしたうま味がつくという点です。
魚介のうま味成分が凝縮されているため、スープや煮物を作る際に少量のいしるを加えるだけで、時間をかけて出汁をとったような深い味わいに仕上がります。複数の調味料を細かく計量して合わせる必要がないため、時短調理にとても役立ちます。
魚と塩だけで醸す、深いうま味の発酵調味料
いしるは、魚と塩だけを原料に、微生物の働きでじっくり発酵・熟成させて作られる、能登に伝わる伝統的な発酵調味料です。
発酵の過程でアミノ酸やペプチドといったうま味成分が生まれ、独特のコクと深みを料理にプラスしてくれます。いつもの調味料をいしるに置き換えるだけで、無理なく発酵食品を日々の食卓に取り入れられるのも、嬉しいポイントです。
基本的な使い方と料理への応用
「魚醤」と聞くとクセが強そうなイメージを持つかもしれませんが、使い方の基本さえ押さえておけば、毎日の料理にとても使いやすい調味料です。

基本は「普段の醤油と同じ感覚」でOK
使い方の基本は、一般的なお醤油と大きく変わりません。醤油の代わりに使ったり、仕上げの塩味補給としてひと垂らししたりするだけで使えます。
具体的には、以下のような料理と相性が良いです。
- 和食:おでん、鍋つゆ、うどんの汁、煮物、炒め物
- 洋食:トマトソースパスタ、カレーの隠し味、スープのベース
- エスニック:ガパオライス、フォー、アジアンサラダのドレッシング
加熱すると魚醤特有のクセのある香りが和らぎ、香ばしさとうま味だけが残るため、炒め物や焼き物に使うのも非常におすすめです。
いしるを使ったおすすめレシピ
いしるを使った具体的なレシピをご紹介します。味付けのベースにいしるを使うだけで、出汁やたくさんの調味料を使わなくても味が決まりやすくなります。お好みのジャンルから試してみてください。
ご飯の味付け・主食に
野菜と合わせて腸活おかず(和え物・おつまみ)
野菜のうま味を引き立てる和え物や、甘酒と合わせた即席漬けにもぴったりです。レモンの酸味や甘酒のやさしい甘みと合わせることで、さっぱりとしつつ深みのある一品になります。
お魚やお肉の炒め物・メインおかずに
魚介のうま味がベースにあるいしるは、魚やお肉のうま味をグッと引き立てます。バターと組み合わせることでコクが増し、ご飯が進むメインおかずが手軽に仕上がります。
詳しい分量や手順については、上記の各レシピページにて紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
応用編|お肉もしっとり柔らかく!万能「いしる麹」を作ってみよう
いしる麹とは、醤油と麹を合わせる醤油麹のいしる版のような麹調味料です。いしるに乾燥麹を漬け込んで発酵させることで、麹に含まれる酵素の働きが食材に作用するようになります。お肉やお魚に塗って漬け込んでおくだけで、酵素の力で身が柔らかく、しっとりジューシーに仕上がります。また、そのままのいしるよりも塩気や魚醤特有の香りのカドが取れて、まろやかで使いやすい味わいになるのも嬉しいポイント。

野菜の和え物や炒め物の味付けに使っても美味しく、材料を混ぜて置いておくだけで簡単に作れるので、ご家庭での常備調味料としてもおすすめです。
いしる麹の作り方
材料(作りやすい分量)
- 乾燥麹 100g
- いしる 200ml
作り方
- 煮沸消毒した清潔な保存容器に乾燥麹を入れます。
- いしるを注ぎ入れ、清潔なスプーンなどで全体をよく混ぜ合わせます。
- フタをして、直射日光の当たらない常温の場所で2週間〜1か月程置けば完成です。(※ヨーグルトメーカーをお持ちの場合は、60度に設定して6時間加温すれば、その日のうちに完成します。)

常温で置く場合は、1日1回スプーンで底からかき混ぜて空気を含ませるようにすると、美味しく発酵が進みます。出来上がったあとは冷蔵庫で保存し、様々な料理に活用してみてくださいね。
初心者が知っておきたい「いしる」の選び方と使い方のコツ
いしるを初めて使う場合、知っておくと失敗しないポイントがいくつかあります。

イカいしるとイワシいしるの違い
いしるには、原料によって主に2つのタイプがあります。
| タイプ | 特徴 | おすすめの用途 |
|---|---|---|
| イカいしる(いしり) | イカの内臓が原料。濃厚なコクと強いうま味がある。 | 煮物、炒め物、カレーの隠し味 |
| イワシいしる(よしる) | イワシの身が原料。比較的クセが少なく上品な味わい。 | 鍋つゆ、おでん、スープ、和え物 |
初めて購入する方で、しっかりとしたコクを求めたい場合は「イカいしる」、魚醤のクセを抑えてさっぱり使いたい場合は「イワシいしる」を選ぶと良いでしょう。
最初は少量から試す
いしるは非常に塩分とうま味がしっかりしている調味料です。最初はレシピに記載されている分量よりも少し控えめ(数滴〜小さじ半分程度)から使い始め、お好みで調整していくのがおすすめです。
香りが気になる時は加熱調理に使う
生のまま使うと魚醤特有の香りが強く感じられることがありますが、加熱すると香りが柔らかくなり、芳醇なコクに変わります。香りが気になる方は、まず炒め物や煮物の隠し味として使ってみてください。

いしるに関するよくある質問(Q&A)
開封後の保存方法と賞味期限は?
開封後はしっかりとキャップを閉め、必ず冷蔵庫で保存してください。塩分濃度が高いため保存性は高いですが、風味が落ちないよう半年から1年を目安に使い切るのが理想的です。
減塩したい場合でも使えますか?
いしる自体は塩分を含んでいますが、一般的な醤油に比べて少量でもしっかりとうま味がつくため、結果として使用量を抑えることができます。出汁と合わせることで塩分控えめでも満足感のある味付けになります。
料理に使うとき、どれくらいの量を目安に入れればいいですか?
.基本的には「普段使っているお醤油の半量」を目安にするのがおすすめです。いしるは魚介のうま味と塩分がしっかりと凝縮されているため、いつもの醤油と同じ量を入れると味が少し濃く感じられることがあります。まずはレシピや普段の味付けの半分くらいから試してみて、味を見ながらお好みで少しずつ足して調整すると失敗しません。
ナンプラーで代用することはできますか?
ナンプラーも同じ魚醤ですので代用は可能です。ただし、ナンプラーはカタクチイワシを原料としていることが多く、塩気がシャープです。いしる(特にイカいしる)の方がコクや甘みが強いことが多いため、ナンプラーを使う場合はみりんなどを少量足すと近い味わいになります。
魚醤特有の風味が少し苦手なのですが、美味しく使える方法はありますか?
最初はごく少量を隠し味として料理に混ぜて使うのがおすすめです。例えば、カレーやトマトソースなどの煮込み料理、炒め物の仕上げなどにほんの少し(数滴〜小さじ数分の1程度)加える使い方です。料理に馴染ませて火を通すことで、魚醤特有の強い香りやクセは和らぎ、料理全体に深いコクとうま味だけをプラスすることができます。直接味を主張させるのではなく、料理の引き立て役としてほんの少しから試してみてください。
まとめ|毎日のごはんに「いしる」を取り入れてみよう

石川県能登の伝統調味料「いしる」は、一見扱いが難しそうに思えますが、実はいつもの醤油と同じように使える非常に使い勝手の良い調味料です。
- 出汁をとらなくても、ひとさじで深みとうま味が加わる
- 和・洋・中華・エスニックとジャンルを問わず使える
- 加熱することで香ばしさが引き立ち、料理がワンランク上の味に仕上がる
忙しい日々の食事作りにおいて、手間をかけずに美味しく作るための心強い味方になってくれます。まずは炒め物の隠し味や、お鍋のスープに少量垂らすところから試してみてはいかがでしょうか。
動画で見る「いしる」の活用法
YouTubeでも詳しいレシピを紹介しています。
初めての方におすすめの「いしる」
「試してみたいけれど、大きな瓶を買って使い切れるか心配」という方もいるのではないでしょうか。
そんな方におすすめなのが、能登の老舗醸造元である舳倉屋(へぐらや)さんのイカいしるです。

舳倉屋さんのいしるは、能登産の新鮮なイカを原料にしており、深い味わいと豊かな風味が特徴。
発酵食大学のオンラインショップでは、初めての方でも気軽に試せる100mlの小容量サイズを用意しています。鮮度が落ちないうちに使い切りやすいサイズ感なので、冷蔵庫で場所をとることもなく、気軽に日々の料理に取り入れることができます。
お手軽に発酵麹シリーズを使ってみたい方はこちらがおすすめ
このレシピの作成者(考案・監修)

発酵食大学レシピ開発チーム
(発酵食エキスパート在籍)
レシピ制作において大切にしていること
2013年から発酵食品のレシピ制作に関わっている発酵食大学の講師やスタッフが、「簡単で美味しくて、ヘルシー」をモットーに制作しています。
スーパーで気軽に手に入る食材を使い、忙しくても誰でも手軽に作ることができるレシピを心がけているので、日々のご飯づくりに参考にしていただけたら嬉しいです。
食物繊維と発酵食品を毎日コツコツ取り入れて「毎日菌トレ!」を目指しましょう。
発酵食大学のレシピ本
『発酵食大学の旨うまレシピ』がKADOKAWAから出版されています。毎日の料理が面倒な人こそ、発酵食品がおすすめです。
塩麹・醤油麹・酒粕・甘酒を使ったレシピ90点掲載。
料理が美味しくなるのはもちろん、色々な調味料を使わなくていい、簡単に味が決まる、腸の働きをよくしてくれるなど、発酵調味料を使った料理はいいことづくめ。毎日の料理が面倒な人、時間がない人こそ作ってほしい発酵の力を生かした、ヘルシーなレシピを紹介。
レシピ本を購入してくださった方の声
- 冷蔵庫で眠っていた塩麹や玉ねぎ麹、賞味期限を気にしなくても使い切れますね。
- 材料が少なくてとにかく簡単!
- 頑張らなくても野菜がたくさん食べられます。
- 添加物だらけの調味料とサヨナラして健康になれそう。
- あと一品欲しい時に重宝します。
など、発酵調味料を使った料理のハードルが下がったというレビューをたくさんいただいています!詳細はAmazonレビューをご覧ください。





お米と一緒に炊き込んだり、ひき肉と炒めてご飯にのせたり。お米との相性も抜群で、いしるのうま味がじんわりと染み込みます。



